小説を読む喜びを濃縮した小説

トラックいっぱいの小説を読む喜びを手のひらサイズに濃縮したような、密度と深度を持つ小説があって、それが上橋菜穂子さんの小説だと思う。「鹿の王」について。

「旅し没入する喜び」
「世界の見え方の違いを体験する喜び」
「見たことない食べ物や景色を想像する喜び」
「自分に無かった哲学に触れる喜び」
「絡み合った事情の中で登場人物がどこへ向かうのか見守る喜び」等々、
これらが、上橋菜穂子さんの繊細で確かな描写力、構成力によって喚起される。

こんな見たことないことだらけの世界の中を、こんなに没入して歩き回れることってある?という感じで、
僕なんか、道を歩いてる時は自分が歩いているということもままならないまま歩いていることがあるので
そんな現実の旅よりよっぽどしっかり世界を旅してるんじゃないかと錯覚してしまう。

この感動をなんとか言葉にしたいと思うので、また時間をおいて言葉を捻り出してみようと思う。

今日の猫