ようやくぼんやりと瞼を開けた目が、鳥が羽根を伸ばすように長い睫毛をゆっくりと動かし、瞬きをした。
秋ひのこ『はしのないせかい』
この表現の時間感覚が引き伸ばされた感じというか、被写界深度が浅くて一箇所にピントが合っている感じというか、ミクロな表現が小説独特で良かった。映像に変換するとしたら、画角いっぱいに目のドアップを映すのだろうか。それじゃ余白がなくて品がないので、景色のカットを挟んだりするんだろうか。
実写に対してアニメーションはその点、抽象的な幾何学のアニメーションや、抽象世界でのキャラクターの演技が挟まることで想像の余白を生んでくれたりして好きだ。
「雪が掌で溶けるように淡く微笑んだ」という表現も良かった。
こういうふうに五感が呼び起こされるような人物の描写がされると、心の中でその人物が生きているような実感が強くなっていく。
今日の猫
