きゅうりの丸齧りが実際以上に美味しそうに感じるのはとなりのトトロの影響だろうし、雨の日も良いなと思うようになったのは言の葉の庭の影響があるだろうし、電柱を見て郷愁を感じるのも、ひぐらしの鳴き声を聞いて切なくなるのも、木漏れ日が煌めいて見えるのも、全て何らかの絵画や映画、アニメーションなどの作品が背景にあるように思う。
オスカーワイルドは「自然が芸術を模倣している」と言っている。
絵に対する褒め言葉として、「本物みたいですごい!」というものがあるが、常々それとは別の言葉ですごいって伝えたいなと思っている。絵の本当の価値は、見え方を変えたり拡張してくれたりするところにある気がするから、自分としてはしっかり感動を伝えられている気がしない。
人間の背中をアングルによって知った時、あるいは、ゴッホのひまわりによって、自然のひまわりを見る目が少しでも変わったとき、私たちは「自然が芸術を模倣している」と早合点するのです。ところで、この早合点の何とすばらしいことでしょう
安野光雅『空想工房』
今日の猫
